訴  状
平成16年5月21日
名古屋地方裁判所 御中
原告訴訟代理人弁護士 森 田 辰 彦  
〒453-0015 名古屋市中村区椿町2−15
原 告    木 下 新 二
〒460-0003 名古屋市中区錦2丁目19番14号 ゴトウビル
          長者町法律事務所(送達場所)
上記代理人弁護士    森 田 辰 彦
TEL 052-232-2661 FAX 052-201-6019
〒451-0045 名古屋市西区名駅2丁目6−5
井 戸 田 病 院 こと
被 告    井戸田   力
損害賠償請求事件
訴訟物の価額 3031万6600円
ちょう用印紙額  11万3000円
第1 請求の趣旨
被告は、原告に対し、金3031万6600円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする

仮執行宣言

第2 請求の原因
1 本件の経緯
(1)  原告は、平成10年11月ころ、右第1趾を深爪したのを契機に、右足趾が痛みだし、被告病院で診察を受けたが、その後、痛みが右足趾全体へと拡大したため、医師の勧めにより、平成11年1月16日、被告病院に入院した。

(2)  入院時の診断によると、原告の病名は、糖尿病、慢性動脈閉塞症であり、既に右足に壊死の症状が見られた。

(3)  被告は、遅くとも平成11年1月20日には右足趾の切断を検討していたが、最も壊死の進行した第4趾のみを切断するか、第3、第5趾をも切断するか、その後判断することにして、手術の日を平成11年2月3日とした。

(4)  その後、被告は、一旦は第4趾のみを切断することにしたが、第3趾の壊死の進行が早かったので、結局、平成11年2月3日、第3、及び第4趾を切断する手術を行った。

(5)  ところが、その後、壊死の範囲が拡大した。

(6)  被告は、原告に対し、当院では手に負えないと申し渡したので、原告は、平成11年2月15日、名古屋第一赤十字病院に転院した。

(7)  転院後、壊死、感染が進行していることが分かり、平成11年2月19日、右大腿を切断する緊急手術が行われた。

(8)  上記緊急手術後も、発熱が続いたため、平成11年2月24日より、創を開放とし、創部を消毒する、という激痛を伴う治療が続けられた。

(9)  その後、平成11年4月8日、根治のために必要となったので、右大腿切断の再手術が行われた。

(10)  その後、原告の症状は軽快し、平成11年9月2日、退院し、以後、車椅子の生活を送っている。

(11)  なお、名古屋第一赤十字病院の診断により、原告は、ガス壊疽に罹患していたことが判明している。

2 被告の責任
(1)  原告は、被告病院に入院するに先立ち、平成10年11月中旬ころより、被告病院に通院していた。
 そして、被告は、その際、原告の右足を診察しており、既に通院時より、原告の右足が発赤していることなど、壊死の兆候が見られることを認識していた。
 また、被告は、上記通院時には、既に原告の血糖値の高いことを認識し、あるいは認識できる状況にあった。
 もとより糖尿病患者は、ガス壊疽に感染するリスクが高いのであるから、被告は、上記症状より、ガス壊疽の可能性を疑うべきであり、早期にレントゲン検査、もしくはMRI検査を実施し(被告が行ったMRI検査は、腰椎に対するものであり、右足は行っていない)、ガスの産生を発見すべきであったのに、これを怠った。
 なおかつ、被告は、原告が入院した際、直ちに創部を切開し、排膿・排ガスを行い、さらに創を開放にして徹底したデブリットメント(汚いところを除く)を行うべきであったのに、それを怠った。
 被告が、原告の入院後、直ちに上記措置を行っていれば、原告は、その後の右大腿切断手術を免れた可能性が大きい。

(2)  仮に、原告が入院した時点で、ガス壊疽の診断が困難であったとしても、被告は、切断の時期、又は範囲の判断を誤った。
 即ち、壊疽は、多種類の菌の混合感染であることが多く、その場合、感染が急速に進行することも考えられるのであるから、もっと早期に切断を実行するか、あるいは、第3、第4足趾のみではなく、前足部の切断を実行しているべきであった。
 早期に、又は広範囲に切断が実行されていたなら、切断後の壊疽の範囲の拡大はなかったと考えられる。

(3)  仮に、より早期の切断が困難であり、切断範囲をより広範囲とすべきとの判断が困難であったとしても、被告は、切断手術後の平成11年2月10日の時点で、切断した創部に壊死が拡大していることを認識したのであるから、その時点で、創を開放にし、洗浄、消毒するなどの措置を取るべきであったのに、それを怠った。
 上記措置により壊死の進行を止められた可能性がある。

(4)  あるいは、仮に上記(3)の措置によっては壊死の進行を止められないとするなら、壊疽の拡大を発見した平成11年2月10日の時点で、直ちに右足足関節部又は膝下部の切断を行うべきであった。
 上記切断により、大腿切断は免れた可能性がある。

(5)  以上のように、被告は、原告との間の診療契約上、的確な診断、治療を行う義務があるのに、原告がガス壊疽に罹患していることを認識せず、かつ、早期に的確な措置を取ることを怠ったため、原告が右大腿切断を余儀なくされるという事態を招いた。
 したがって、被告は、原告が右大腿切断に至ったことにつき、債務不履行責任を負う。

3 損害
(1) 逸失利益
 原告は、本業の会社役員のほか、他に旅館を所有している。
 その旅館は、他者(●●●●)との共同経営であり、原告は、●●●●氏とともに、自ら事務、食事、部屋の準備等の諸々の仕事をしていた。
 また、原告は、所有者として、その旅館経営から生じた所得の半分を受領していた。
 現存する資料として、平成9年分の確定申告書があるが、それによると、上記旅館は年間約60万円の所得を上げていた。
 原告の記憶では、上記旅館の所得は、通常、もっと多額であったが、一応、資料に基づく金額として、原告は、少なくとも上記旅館の所得から、毎年30万円の収入を得ていたことになる。
 ところが、原告は、右大腿部切断により、上記旅館の仕事をすることができなくなったので、上記旅館の経営が成り立たなくなり、廃業を余儀なくされた。
 したがって、原告は、少なくとも年間30万円の収入を失った。
 原告は、その後、少なくとも10年間は就労できたと考えられる。
 よって、原告は、30万0000円に10年間に相当するライプニッツ係数7.722を乗じた231万6600円の得べかりし利益を失った。
(2) 慰謝料
 原告は、右足を膝上から切断することを余儀なくされた。
 また、原告の名古屋第一赤十字病院で治療を受けた際、創を開放にして、創部を消毒する治療が行われたが、その治療は気を失うほどの激痛を伴うものであり、原告が受けた苦痛は筆舌に尽くし難いものであった。
 さらに、原告は、治癒した現在においても、切断した部位に常に激しい痛みを感じる。そのため、常時痛み止め薬を要する状態である。
 また、創部の痛みは、眠れないほど激しいものになるので、睡眠薬を必要とすることが度々である。
 かかる原告の苦痛を慰謝するのに必要な慰謝料の金額は、少なくとも金2600万円を下らない。
(3) 弁護士費用
 原告は、上記損害の賠償を受けるために、弁護士に依頼し、本訴状を提起することを余儀なくされた。
 本件の弁護士費用としては、200万円が妥当である。
 よって、原告は、被告らに対し、上記損害の合計金3031万6600円及び本訴状送達の日の翌日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
証 拠 方 法
追って第1回口頭弁論期日までに提出する。
添 付 書 類
1 訴状副本         1通
2 訴訟委任状        1通